織田信長時空戦記 
〜三國志偽伝〜

 作 木下一刀斎

更新情報  
2010.08.26 最終章アップしました。大団円です!  
   

◆お知らせ
せっかくここまで書いたので、どっか出版社に売り込みにいこうと思います。
そういうこともあり、現在原稿修正中。
ご意見あれば、こちらの掲示板に書き込みしてください。(ただし常には、掲示板はチェックはしておりません)


◆はじめに 三国志 × 織田信長

 もし桶狭間の織田信長軍団が、三国志の世界にタイムスリップしたら、という歴史ファンタジーです。
 荒唐無稽なストーリーなので、その分、歴史書などを可能な限り読み込みました。
 特に信長たちがどんな武道を駆使したかを調べるために、戦国初期に創流した武道を取材しました。
 戦国後期や江戸時代、明治に入って完成された武道しか知らない人には、カルチャーショックかもしれません。
 しかし、これこそが親兄弟でさえ殺しあった下克上の武道です。
 下克上の侍が、三国志という広大な世界でどんな活躍をするか、気長に読んでもらえればと思います。
 ※表記できない文字があるため原稿はPDFファイルにしております。

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織田信長時空戦記
 
〜三國志伝〜

 

章 桶狭間   2010.08.13

 

 又左は夢の中にいた。
 闇の中をやみくもに歩いていく。背にかつぐ朱色の大身鑓がズシリと重かった。
 進む先に、ポツンと灯りが見えた。周囲の暗闇に喰い尽されそうな、頼りない灯り。その中にひとりの男が立っていた。
 和装の腰には二本の太刀、漆黒の鞘に納まった備前長船光忠と朱と金箔で彩られた豪奢な鞘に納まった脇差、不動行光だ。どちらも後世まで名を残す、不世出の名刀だ。異様だったのは身につけている甲冑だった。威し糸の和の鎧ではない。黒光りする南蛮胴の鎧に中国の通貨である永楽通宝の刻印が刻まれている。その甲冑の上から紅いビロードのマントを…… 

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二章 桶狭間から黄乱の地へ 2010.08.14
   能の第二幕が開き、ポンッと小気味よい鼓が鳴った。滑稽なほど着ぶとりした信長が、舞台の中央にすすむ。
 次の瞬間、馬蹄が鳴り響いた。赤い母衣を背負った完全武装の騎馬武者が、もう一頭の騎手を乗せていない葦毛の馬をつれて舞台の袖までやってきた。黒塗りの鑓も小脇に抱えた屈強の侍、吊りあがった眼は血走り、まるで燃えているようにも見える。赤母衣衆筆頭・鑓三本の伊東清蔵だ。
「何事か!」
 諸将が無礼な騎馬武者を怒……
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三章 治世と乱世の狭間 2010.08.15
 

 中平元年(一八四)春二月、鉅鹿の人張角、自ら黄天と称す。みな黄巾をつけて、同日に反叛す。
(後漢書 霊帝紀)
 春になると地上の花が同時に芽吹くように、中国全土三十六ヵ所で同月同日に起こった反乱は、後に黄巾の乱と呼ばれる。同時多発の武装蜂起に、地方を守る役人は皆逃亡し、安平、甘陵では皇族も賊軍の捕虜となるほどであった。
 何より彼らを混乱に陥れたのは……

   

 

四章 信長軍団 2010.08.16

   黄巾軍の追撃を振り切った官軍は、何とか体勢を整え小休止をしていた。幕舎を張る余力もなく、地面に座り込む官兵に雷雨が容赦なく打ちつけていた。しかし、これも一瞬の休息でしかない。黄巾軍が無秩序な追撃ではなく、組織だった掃討戦を実行するために…
   

 

五章 死戦 2010.08.17
  「威(い)矢(や)!」
「保(ほ)っ」
「曳(え)威(い)!」
 まるで死人のように横たわった兵たちが休憩する曹操軍の陣中で、奇妙な掛け声が響く。疲れ切った官軍の中で、その声は精気に満ちていた。
 もうすぐ夜を迎えようとする中、ほんの少しばかりの休息を…
   

 

六章 下克上の男たち
    信長たちの行く手に広がっていたのは、無人の村々だった。当面の最大案件である、食糧の確保をするために村に赴くのだが、どこも無人だった。それも戦があるから避難したというわけではなさそうだった。それは村の荒れ具合がひどいことからもわかる。廃墟となった家屋には……
   

 

七章 荒廃
    話を三国志の時代に戻そう。信長らがたどりついたのは、うらぶれた農村だった。
 奇態な信長集団が騎馬で近づいてきて、彼らは怯えた。ある者は鍬を持って戦う姿勢を示し、ある者は子供を抱いて民家の影に隠れようとしていた。それを曹徳が必死になって説明した。
 異様だったのは……
   

 

八章 又左離脱
   又左たちが向かう村には、兵煙があがっていた。
「なんだ、あれは」
 伊東清蔵のつぶやきと、又左と曹徳の馬が加速するのは同時だった。
「まさか黄巾賊か」
「ありえますね。孟徳兄さんの話だと、三十六か所で蜂起したと聞きます。三十七か所目が、洛陽よりさらに近い場所でも不思議はない」
「おーい、又左、曹徳殿、危険だ。様子を見るべきだ。止まれ」
 伊東がゼイゼイ言いながら、追いつく。
「たわけ、そんなことを言ってる場合か」
 又左の脳裏に……
   

 

九章 信長の使命
   一方、信長たちは、騎馬をかけていた。不眠不休の体は悲鳴を上げ、精神や神経は変調をきたそうとしていた。意識が朦朧とする中、馬をかけていると視界が二重にも三重にもなった。頭をふると視界がもとに戻るが、それは一瞬のことだった。また、細胞分裂でも……
   



 

十章 全滅
 

 信長たちが曹操軍本営に帰還した。帰陣した途端、口から泡を吹いて馬がどうと倒れた。そして下馬した母衣衆もバタバタと地面に倒れる。仰向けになり、ハアハアと荒い息を吐く。
「よく帰ってきてくれた、信長殿」
 曹操と曹洪が駆け寄る。信長も地面に……

   


 

十一章 信長の決断
   曹操率いる官軍は意気揚揚と退きあげる。殿の職務を全うしただけでなく、再編不可能とさえ思われる打撃を与えたのだから当然だろう。軍の先頭には、曹操孟徳、そして……
   



 
 

終章 別れ
   又左や信長たち二十余騎の母衣衆を包囲した黄巾賊=B彼らの背後を襲ったのは黄巾軍≠セった。
 黄色い頭巾をしっかりと頭に巻いた様子は、太平道への強靭な信仰心の証だった。信長たちを弄ぶつもりだった賊に……
   

 

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